べき零群 – 定義「冪零群は剰余をとってもnilpotent」

" べき零群 “の定義は、中心列という特別な正規列をもつことです。

そのため、中心列に関する基礎的な内容を押さえます。

そして、基本的な性質であるべき零群の剰余群について述べています。

この記事で使う記号ですが、
群 X について、その中心をZ(X) と表しています。

また、交換子群を [M, K] というように表しています。

中心列という有限の長さで単位群に到達する列をもつのがべき零群の定義なので、中心列を理解することで学習の理解が深まるかと思います。

べき零群-定義:中心列に関する内容

※ この記事で e は群 G の単位元を表しています。

この定義で、各剰余群について、
Gi-1/Gi が G/Gi の中心に含まれているという内容があります。

この内容の同値な書き換えを示します。

【同値な書き換え】

Gi-1/Gi ⊂ Z(G/Gi) は、
[G, Gi-1] ⊂ Gi と同値である。

<証明>

Gi-1/Gi ⊂ Z(G/Gi) とすると、
g∈G, h∈Gi-1 に対して、中心の定義から、
(ghg-1h-1)Gi
= (gGi)(hGi)(gGi)-1(hGi)-1
= (gGi)(gGi)-1(hGi)(hGi)-1
= eGi となります。

つまり、
[g, h] = ghg-1h-1 ∈Gi です。

[G, Gi-1] のすべての生成元が Gi に含まれているため、
[G, Gi-1] ⊂ Gi なっています。

逆に [G, Gi-1] ⊂ Gi とします。

g∈G, h∈Gi-1 に対して、
ghg-1h-1 ∈Gi だから、
(ghg-1h-1)Gi = eGi です。

これは、
(gGi)(hGi)(gGi)-1(hGi)-1 = eGi ということです。

両辺に右から (hGi)(gGi) を乗じると、
(gGi)(hGi) = (hGi)(gGi)

hGi は G/Gi のすべての元と可換ということなので、
hGi ∈ Z(G/Gi) です。

すなわち、Gi-1/Gi ⊂ Z(G/Gi)【証明完了】

3つの列についての基本

中心列に関連して降と昇があります。

降中心列と昇中心列という記事で、使う記号も含めて、さらに細かい基礎を述べています。

降中心列だと、
各 Ci(G)/Ci+1(G) が Z(G/Gi+1) に含まれているので、有限の長さで単位群に辿り着くと、中心列ということになります。

昇中心列については、
各 Zi+1(G)/Zi(G) が Z(G/Zi(G)) に含まれるので、有限の長さで全体 G に辿り着くと中心列ということになります。

これら3つの列の関係についての定理を証明します。

3つの列をつなぐ定理

【定理1】

群 G の中心列を、
G = G0 ⊃ G1 ⊃ … ⊃ Gr = {e} とする。

このとき、0 ≦ i ≦ r について、
Ci+1(G) ⊂ Gi である。


<証明>

i = 0 のときは、
C1(G) = G = G0 より成立しています。

i = k ≦ r-1 のとき、
Ck+1(G) ⊂ Gk と仮定します。

すると、
Ck+2(G) = [G, Ck+1(G)]
⊂ [G, Gk]

また、中心列の定義から、
[G, Gk] ⊂ Gk+1 です。

すなわち、Ck+2(G) ⊂ Gk+1 となります。

このため、帰納的に、
0 ≦ i ≦ r のとき、
Ci+1(G) ⊂ Gi が示せました。【証明完了】

この【定理1】から、
群 G が中心列をもつと、
n ≧ r+1 について、
Cn(G) ⊂ Cr+1(G) ⊂ Gr = {e} となります。

このため、
降中心列は、r+1 番目以降の項が確実にすべて単位群となっています。

つまり、群 G が中心列をもつならば、降中心列が有限の長さで単位群に到達するということです。

降中心列が有限の長さで単位群に到達するということは、降中心列が中心列の定義を満たすことになります。

よって、
【定理1】から次の【定理1’】を得ます。

【定理1’】

群 G が中心列をもつことと、G の降中心列が有限の長さで単位群になることが同値である。

昇中心列についても、同じようなことを考えます。

中心列についても考察

【定理2】

群 G の中心列を、
G = G0 ⊃ G1 ⊃ … ⊃ Gr = {e} とする。

このとき、0 ≦ i ≦ r について、
Gr-i ⊂ Zi(G) である。


<証明>

i = 0 のとき、
Z0(G) = {e} なので、
Gr = {e} ⊂ Z0(G) だから、成立しています。

i = k ≦ r-1 について、
Gr-k ⊂ Zk(G) と仮定します。

中心列の定義の書き換えから、
[G, Gr-k-1] ⊂ Gr-k です。

ゆえに、
[G, Gr-k-1] ⊂ Zk(G) となっています。

そのため、任意の h∈Gr-k-1, g∈G に対して、
(ghg-1h-1)Zk(G) = Zk(G) です。

よって、剰余群 G/Zk(G) において
(gZk(G))(hZk(G))
= (hZk(G))(gZk(G))

ゆえに、hZk(G) は G/Zk(G) のすべての元と可換です。

hZr-k(G) ∈ Z(G/Zr-k(G)) です。

Zk+1(G) の定め方より、
h ∈ Zk+1(G) です。

すなわち、
Gk+1 ⊂ Zk+1(G) です。

以上より、帰納的に、
0 ≦ i ≦ r について、
Gr-i ⊂ Zi(G) です。【証明完了】

この【定理2】から、群 G が中心列をもてば、昇中心列が有限の長さで G に到達するということになります。

i = r のとき、
G = G0 ⊂ Zr(G) となるということです。

Zr(G) ⊂ Zr+1(G) ⊂ Zr+2(G) ⊂ … なので、
r 以降の項は、すべて G と等しくなります。

この昇中心列を次のように眺めます。

G = Zr(G) ⊃ Zr-1(G) ⊃ … Z0(G) = {e} と、全体から単位群へという見方をします。

すると、
それぞれの隣接する二項について、
Zi(G)/Zi+1(G) ⊂ Z(G/Zi(G)) だったので、
昇中心列が中心列となっていることが分かります。

そのため、【定理2】から次の【定理2’】を得ます。

【定理2’】

群 G が中心列をもつことと、G の昇中心列が有限の長さで全体 G になることが同値である。

これで、【定理1’】と【定理2’】によって、中心列をもつことを有限の長さの降中心列や昇中心列で書き換えることができるということが分かりました。

べき零群 G は中心列をもつので、これらの内容は基本となります。

ここからは、べき零群の剰余をとったとき、べき零となっているということを示します。

べき零群の剰余群

【命題】

べき零群 G の正規部分群を N とする。

このとき、G/N もべき零群である。


<証明>

群 G の降中心列は、帰納的に次のように定義されています。

C1(G) = G とし、
自然数 i に対して、
Ci+1(G) = [G, Ci(G)] です。

自然数 n に対して、
Cn(G) は G の正規部分群になっていることが証明されています。

G がべき零群、つまり、G が中心列をもつときには、ある自然数 r が存在して、
Cr(G) = {e} となるということです。

N を G の正規部分群としたとき、
剰余群 G/N についても降中心列を定義することができます。

C1(G/N) = G/N,
Ci+1(G/N) = [G/N, Ci(G/N)] です。

ここで、自然数 n について、
Cn(G/N) = Cn(G)N/N となります。

このことを示しておきます。

n = 1 のとき、
C1(G)N = GN = G だから、
C1(G)N/N = G/N = C1(G/N) となっています。

n = i のときに、
Ci(G/N) = Ci(G)N/N と仮定すると、
Ci+1(G/N) = Ci+1(G)N/N となることを示します。

生成元に注目する

Ci+1(G) の生成元は、
[g, x] (g∈G, x∈Ci(G)) という形です。

任意の y∈N に対し、
Ci+1(G)N/N の剰余類として
([g, x]y)N = [g, x]N
= (gN)(xN)(g-1N)(xN)-1

帰納法より、
xN = (xe)N∈Ci(G)N/N = Ci+1(G/N) です。

つまり、
([g, x]y)N = (gN)(xN)(g-1N)(xN)-1
= [gN, xN]∈[G/N, Ci+1(G/N)]

Ci+1(G)N/N の生成元が、
すべて Ci+1(G/N) に含まれることが示せたので、
Ci+1(G)N/N ⊂ Ci+1(G/N) です。

今度は、
gN∈G/N, aN∈Ci(G/N) を用いた
[gN, aN] という Ci+1(G/N) の生成元について考えます。

[gN, aN]
= (gN)(aN)(gN)-1(aN)-1

ここで、帰納法より、
a は Ci(G)N/N の代表元だから、
ある s∈Ci(G), t∈N を用いて、
a = st と表すことができます。

tN = N より、
[gN, aN]
= (gN)(aN)(gN)-1(aN)-1
= (gN)(sN)(gN)-1(sN)-1
= [g, s]eN

[g, s]∈[G, Ci(G)] = Ci+1(G) より
[gN, aN]
= [g, s]eN ∈ Ci+1(G)N/N です。

Ci+1(G/N) の生成元が、
すべて Ci+1(G)N/N に含まれるため、
Ci+1(G/N) ⊂ Ci+1(G)N/N です。

これで、Ci+1(G/N) = Ci+1(G)N/N を確認できました。

帰納法から、任意の自然数 n に対して、
Cn(G/N) = Cn(G)N/N です。

このことから、群 G が冪零だと、Gの降中心列が有限の長さで単位群となることから、剰余群 G/N の降中心列も有限の長さで単位群となります。

すなわち、G/N はべき零群です。【証明完了】

関連する内容として、p群がべき零群であるという記事も投稿しています。

これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。